納税者にとって不利な改正は過去にさかのぼって(遡及)適用しない、というのがこれまでの政府の基本姿勢でした。ところが、今年3月末までに国会で成立する予定の平成26年度税制改正関連法では、納税者に不利になる法改正が今年1月1日にさかのぼって施行されます。
その遡及適用される制度改正とは、所得税関係のもので特定居住用財産の買い換え特例の適用要件に関するものです。具体的には、昨年12月に政府・与党が決定した平成26年度税制改正大綱に盛り込まれたもので、「特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例について、譲渡資産の譲渡対価に係る要件を1億円(現行:1.5 億円)に引き下げた上、その適用期限を2年延長する」としたうえで、適用期日を「(注)上記の改正は、平成26 年1月1日以後に行う居住用財産の譲渡について適用する」としています。
特定居住用財産の買い換え特例とは、住居の買い換えで、売却した住居について譲渡益が発生した場合に、一定の要件を満たせば譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができるという制度です。その適用要件である譲渡対価の上限について、5千万円引き下げるということは、1億円を超える物件を売却する人が同特例を使えないようにするという納税者に不利益を与える改正。この改正要件が、すでに今年1月1日から適用を開始しているのです。